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🎤 【検証】なぜ胸式呼吸は歌に不向きなのか? ― 発声生理学から考える腹式呼吸の意味

  • 執筆者の写真: vocolab2023
    vocolab2023
  • 1月21日
  • 読了時間: 3分

🌟 はじめに


「腹式呼吸の方が歌には良い」とよく言われます。


しかし、その理由を具体的に説明できる人は多くありません。


私自身の経験から、胸式呼吸は首や喉に力みを生み、喉頭のコントロールを奪うように感じています。


今回はこの感覚を生理学・音声学の観点から検証してみます。


💪 1. 胸式呼吸で起こること ― 「首の緊張」が喉を縛る


胸式呼吸では、吸気の際に胸郭が大きく広がり、肋間筋や胸鎖乳突筋、僧帽筋などの上半身の筋肉が強く働きます。

このとき首周りにある吸気補助筋が過剰に緊張すると、喉の位置(喉頭)が微妙に引き上げられ、発声が硬くなりやすくなります。


実際、胸式呼吸中にはこれらの筋群が過活動になることが筋電図研究で確認されています。


例えば、胸式呼吸は胸鎖乳突筋(SCM)と僧帽筋上部の緊張を強めることが知られています(CliftonSmith & Rowley, 2011)。


🔒 2. 首の緊張が喉頭の自由を奪うメカニズム


喉頭(声帯を含む器官)は、首や胸の筋肉と筋膜でつながっています。


そのため、頸部筋群が過剰に緊張すると、喉頭の上下位置が固定され、声帯の開閉や微調整が難しくなるのです。


声が詰まる・高音が出にくい・喉が締まるといった感覚は、まさにこの状態で起こります。


音声生理学者のTitzeらも、頸部や胸部の余計な筋緊張が発声効率を下げることを報告しています(Titze, 2008)。


🌬️ 3. 腹式呼吸がもたらすリラックス効果


一方で、腹式呼吸(横隔膜呼吸)を行うと、胸の上部の筋活動が抑えられ、首・肩の緊張が低下します。


研究では、横隔膜を意識した呼吸トレーニングによって、胸鎖乳突筋や僧帽筋の筋活動が有意に減少したことが確認されています(Lee et al., 2010)。


つまり、腹式呼吸は単なる「お腹で吸う」技術ではなく、喉を自由に保つための身体的前提条件なのです。


⚖️ 4. 「腹式だけが正しい」わけではない


とはいえ、科学的には「胸式が悪い」「腹式だけが正しい」とまでは言えません。


プロの歌手の研究では、多くが**胸と腹を協調させる「混合型呼吸」**を使っています(Iwarsson, 2001)。


重要なのは、どの筋肉をどれだけ使うかを「無意識で最適化できる状態」にすることです。


腹式呼吸は、その安定した基礎を作るための入口と考えるとよいでしょう。


🧩 5. 私の仮説(まとめ)


まとめると、私の考える仮説モデルはこうです:


❌ 胸式呼吸の場合


胸式呼吸 → 胸郭の拡張 → 吸気補助筋の過活動 → 首の緊張 → 喉頭の可動性低下 → 発声の硬直


✅ 腹式呼吸の場合


腹式呼吸 → 横隔膜の下制 → 頸部リラックス → 喉頭の自由度確保 → 声の柔軟性向上


このメカニズムは、筋電図・音声生理・音声治療の各研究結果と整合しており、現時点で反証されていません。


むしろ、発声障害(特に筋緊張性発声障害)の治療においても、同様の原理が応用されています(Angsuwarangsee & Morrison, 2002)。


🎯 6. 結論


腹式呼吸の意義は、「息をお腹に入れること」ではなく、喉頭を縛る首の緊張から自由になることにあるのだと思います。


科学的にも完全に証明されたわけではありませんが、生理学的な整合性と体感的な実感の両面から考えると、この仮説には十分な説得力があります。


📚 引用文献(抜粋)

  • (CliftonSmith & Rowley, 2011) — Breathing pattern disorders in physiotherapy practice

  • (Titze, 2008) — Physiologic mechanisms of vocal effort

  • (Lee et al., 2010) — Effects of diaphragmatic breathing on upper trapezius activity

  • (Iwarsson, 2001) — Respiratory mechanics in classical singing

  • (Angsuwarangsee & Morrison, 2002) — A physiologic approach to diagnosis and treatment of muscle tension dysphonia


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